住宅ローン控除は共働き夫婦どちらが得?3つの組み方を徹底比較

ただし、これは「正解は1つ」という話ではありません。育休や転職で収入が下がると、せっかくの控除枠を使い切れず損をすることもあります。
この記事では、単独・ペアローン・連帯債務の違い、年収別の負担割合の決め方、贈与税や離婚・死亡時のリスク、確定申告の手順までを、FP相談の現場で見てきた実例を交えて整理します。読み終えたとき、自分たちならどう組むべきかの判断軸が持てるはずです。
住宅ローン控除は共働き夫婦どちらが受けるべき?結論から解説

住宅ローン控除を夫婦どちらが受けられるかは、好みで選べるものではありません。住宅ローンの契約形態と登記上の持分で自動的に決まります。
夫婦それぞれが控除を受けられる仕組み
夫だけの単独名義なら原則として夫のみ、妻だけの単独名義なら妻のみが控除の対象です。共有名義・ペアローン・連帯債務であれば、条件を満たす範囲で夫婦それぞれが控除を受けられます。
ポイントは、控除額が「年末残高の0.7%」で計算され、しかも各自の納めた所得税(と住民税の一部)が上限になる点です。つまり、いくら借りても税金を払っていなければ控除は使い切れません。
どちらか一方で組む場合の判断基準
片方の収入だけで十分な借入額をまかなえて、もう一方が育休に入る予定なら、収入が安定している側の単独ローンがシンプルです。
逆に、一方の所得税が控除額より少ないなら、控除枠が余ってしまいます。この「余り」が出るかどうかが、単独か2人で組むかの最初の分かれ道です。
2人で組んだほうが得になるケース
双方に安定した収入と所得税額があり、借入額も大きいなら、夫婦2人で控除枠を使ったほうが得です。1人分の控除枠では年末残高0.7%を税額が下回り、使い切れないことがあるからです。
私の実感としては、世帯で4,000万円以上を借りる共働きほど、2人で組むメリットが効いてきます。
そもそも住宅ローン控除とは?最新制度のしくみ
判断の前提として、制度の骨格を押さえておきます。ここを誤解したまま組むと、後で「思ったより戻ってこない」となりがちです。

住宅ローン控除の基本と控除のしくみ
住宅ローン控除は、年末のローン残高の0.7%を所得税などから差し引く制度です。控除期間は入居時期や住宅区分で変わりますが、一般に最長13年です。
適用には返済期間が10年以上であること、対象住宅が原則として省エネ基準を満たすことが必要です。借入限度額は住宅性能で変わります。
控除額より納めた税金が少ないとどうなるか
控除額が所得税で引き切れない場合は、住民税からも控除されます。住民税からの控除上限は、一般に97,500円です。
それでも控除枠が残れば、その分は単純に消えます。戻ってくるわけではありません。ここを知らずにペアローンで借りすぎ、片方の控除が宙に浮くケースを何度も見てきました。
子育て世帯・若者夫婦世帯への借入限度額の上乗せ条件
令和6年入居の一定の省エネ住宅では、19歳未満の扶養親族を有する人が「特例対象個人」となり、借入限度額の上乗せ対象になります。夫婦それぞれが要件を満たせば、それぞれに適用されます。
| 住宅区分 | 借入限度額 |
|---|---|
| 認定住宅 | 5,000万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 |
夫婦で住宅ローンを組む3つの方法と控除の違い
夫婦で組む方法は大きく3つ。誰が借主になり、誰が控除を受けられるかが、それぞれ違います。

単独ローン(一方だけが借りる)
夫または妻の片方だけが契約する形です。控除を受けられるのも、借りて名義人になった1人だけ。手続きも費用もシンプルですが、もう一方の控除枠は使えません。
ペアローン(夫婦が別々に借りる)
1つの物件に対し、夫婦がそれぞれ別々のローンを契約します。2人とも契約者になるため、条件を満たせば双方が控除を受けられます。
注意したいのは、借入名義に含まれない配偶者は控除を受けられないという点です。あくまで「自分名義の借入と自分の納税額」が控除の前提になります。
収入合算(連帯債務・連帯保証)と控除を受けられる人の違い
収入合算には「連帯債務」と「連帯保証」があり、控除の扱いがまったく違います。ここを混同する人が多いので、表で整理します。
| 組み方 | 契約形態 | 控除を受けられる人 |
|---|---|---|
| 単独ローン | 1人が借入 | 名義人本人のみ |
| ペアローン | 夫婦が別々に借入 | 夫婦それぞれ(各自の残高・納税額が上限) |
| 連帯債務 | 1本を2人で負う | 主債務者・連帯債務者の双方(負担割合に応じて) |
| 連帯保証 | 1人が借入・1人が保証 | 主債務者のみ(連帯保証人は不可) |
連帯債務では、各人の控除対象となる借入金が、債務者ごとの負担割合に応じて計算されます。これは国税庁が具体例付きで示しています。一方、連帯保証の保証人は借主ではないため、控除を受けられません。
ペアローンと連帯債務を比較|メリット・デメリット

夫婦2人で控除を受けたい場合、現実的な選択肢はペアローンか連帯債務です。正直に言うと、この2つは似ているようでコスト構造が大きく違います。
それぞれのメリットとデメリット
ペアローンは、各自が別々のローンを持つため、団信も金利タイプも返済期間も別々に設計できる自由度があります。その反面、契約が2本になるぶん諸費用が増えます。
連帯債務は契約が1本なので諸費用を抑えやすいのが利点です。ただし取り扱う金融機関が限られ、連帯債務に対応した団信の条件も確認が要ります。
諸費用が2本分かかる点と金額の目安
ペアローン最大の弱点が、ここです。契約が2本になるため、事務手数料・印紙代・登記関連費用などが原則2人分かかります。連帯債務なら契約1本で済みます。
| 項目 | ペアローン | 連帯債務 |
|---|---|---|
| ローン契約 | 2本 | 1本 |
| 事務手数料・保証料 | 原則2人分 | 原則1本分 |
| 印紙代・契約書 | 2契約分 | 1契約分 |
| 団信 | それぞれ加入できる | 契約形態により扱いが異なる |
「2人で控除を受けられて得!」と聞くと魅力的ですが、控除の上乗せ分と、2本分の諸費用増を天秤にかける視点を忘れないでください。
登記上の名義(共有持分)がどう変わるか
ペアローンも連帯債務も、住宅は夫婦の共有名義になります。違いは持分の決め方です。
ペアローンでは、各自の借入額(=出資額)に応じて持分を登記するのが基本です。連帯債務では、頭金と各自が負う債務割合の合計から持分を決めます。この持分の決め方を雑にやると、次章の贈与税問題に直結します。
年収・借入額別に見る「どちらが多く負担すべきか」の考え方
ここが一番相談の多いところです。「夫婦どちらが多く借りるべきか」は、結局それぞれの所得税額で決まります。

負担割合と控除額の関係をシミュレーション
控除額は年末残高の0.7%。ただし各自の納税額が上限です。だから、所得税をたくさん払っている側に借入を寄せたほうが、控除を使い切りやすくなります。
例えば世帯で4,000万円を借りるとして、年末残高の0.7%は約28万円。これを夫1人の納税額で吸収しきれないなら、納税している妻にも借入を分け、2人の枠で受けるほうが取りこぼしが減ります。
逆に妻の所得税が年に数万円しかないのに半分背負わせると、妻側の控除が余ります。負担割合は「収入の比率」ではなく「所得税額の余力」で考えるのがコツです。
持分割合と出資割合のズレが招く贈与税リスク
見落とされがちな最重要ポイントです。登記する持分は、実際の出資割合(頭金+各自の借入額)と一致させる必要があります。
例えば夫が3,000万円、妻が1,000万円を出したのに、持分を2分の1ずつで登記すると、夫から妻へ差額分を贈与したとみなされ、贈与税の対象になりかねません。
私が確定申告のサポートで最初に確認するのは、まさにこの出資と持分の整合です。ここがズレていると、控除以前に税務署からの問い合わせリスクを背負うことになります。
産休・育休で所得税が減ると控除メリットが消える問題と対策
共働き前提で2人とも目一杯借りたあと、妻が産休・育休に入ると収入が下がります。所得税が減れば、控除の上限も下がる。最悪、妻側の控除がほぼ使えない年が出ます。
対策は2つ。1つは、育休を見込んで妻の借入額(=控除枠の前提)を控えめにすること。もう1つは、復職後の収入を見据えて持分と負担を設計しておくことです。
控除は使い切れなかった年の分を翌年に繰り越せません。だからこそ、ライフプランを織り込んだ資金計画が要になります。これは制度の落とし穴と言っていい部分です。
見落としがちなリスクと将来への備え
控除の損得だけで決めると、後で泣くことがあります。死亡・離婚・収入減という「もしも」への備えこそ、夫婦ローンの本丸です。

団信の加入パターンと死亡・就労不能時の残債リスク
団体信用生命保険(団信)は、契約者が死亡・高度障害になったとき残債を保険で完済する仕組みです。ペアローンでは夫婦それぞれが自分のローンに団信をかけます。
ここに落とし穴があります。夫が亡くなれば夫のローンは消えますが、妻のローンはそのまま残るのです。連帯保証で1本の場合は、主債務者の団信1本のみが前提になることが多く、保証人側の備えが手薄になりがちです。
「片方が欠けても、残された側が返し続けられるか」。この問いに答えられない設計は、私はおすすめしません。
離婚時の名義・持分・ローントラブルと対処法
ペアローンや共有名義は、離婚時に最ももめます。物件は共有、ローンは別々。どちらかが住み続けるなら、相手分のローンと持分をどう清算するかが問題になります。
売って残債を返すのが一番すっきりしますが、売却額がローンを下回ると差額の負担が残ります。名義変更だけしてローンはそのまま、という対応は金融機関の承諾が必要で、簡単には進みません。
組む段階で「別れたときどうするか」を話せる夫婦は少ないです。でも、ここを一度でも想像できているかどうかで、後の重さが変わります。
片働きへの転換を見据えた借り換え・繰上返済
将来どちらかが仕事を辞める可能性があるなら、その時点で返済を片方に寄せる選択肢を持っておきます。
具体的には、収入が減る側のローンを繰上返済で軽くする、あるいは1本にまとめる借り換えを検討する、といった手です。ただし借り換えには再び諸費用がかかるため、控除の残期間と費用を見比べて判断します。
売却・住み替え時に3000万円特別控除を夫婦で使えるメリット
共有名義の意外な恩恵がここにあります。マイホームを売って利益が出たとき、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特別控除があります。
夫婦それぞれが共有持分を持っていれば、要件を満たす範囲で各自がこの控除を使える可能性があります。つまり、住み替え時の税負担で有利に働くことがあるのです。組むときのコストだけでなく、出口での効果も見ておきたいところです。
控除を受けるための条件と確定申告の手続き

どんなに上手く組んでも、条件を外したり申告を忘れたら控除はゼロです。ここは実務で取りこぼしの多い箇所なので、丁寧に確認します。
住宅ローン控除を受けるための条件チェックリスト
主な要件を一覧にしました。1つでも欠けると対象外になります。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 返済期間 | 10年以上 |
| 居住要件 | 取得から6か月以内に入居し、年末も住んでいる |
| 床面積 | 原則50㎡以上(特例で40㎡以上のケースあり) |
| 合計所得 | 原則2,000万円以下(40〜50㎡特例は1,000万円以下) |
| 住宅性能 | 原則として省エネ基準を満たす住宅 |
夫婦それぞれが行う確定申告と必要書類
初年度は会社員でも確定申告が必要です。共働きで夫婦それぞれが控除を受ける場合は、それぞれが個別に確定申告を行います。1枚にまとめることはできません。
2年目以降は、給与所得者で要件を満たせば、原則として年末調整で手続きできます。ここで楽になります。
申告では、各自の借入残高証明書を別々に用意し、自分の持分・自分の借入額で計算するのが基本です。共有名義の場合は持分割合の記載も必要になります。
控除を最大限に活かすポイント
最後に、相談現場で必ず伝えている要点を3つに絞ります。
1つ目、負担割合は所得税額の余力で決める。2つ目、出資割合と持分割合を一致させて贈与税を避ける。3つ目、育休や退職など収入が下がる時期を計画に織り込む。この3点を外さなければ、大きな失敗はまず起きません。
住宅ローン控除に関するよくある質問(FAQ)
相談で特に多い3つの疑問に、結論から答えます。

よくある質問
住宅ローン控除は、共働き夫婦が使える数少ない強力な税の味方です。ただし「得」を最大化したいなら、損得の前にリスクの設計を済ませておくこと。まずは夫婦それぞれの源泉徴収票を並べて、所得税額を確認するところから始めてください。
